第八怪 奇怪な町

これはとある知人から聞いた奇怪な話。

熊伍郎町(くまごろちょう)という何とも奇怪な町があったことを今年で30歳になる正春は思い出していた。

熊伍郎町はちょうど10年前に”あの奇怪な事件”と共になくなってしまった。

熊伍郎町は人口わずか数百人の小さな町だ。

熊伍郎町一丁目の角を曲がって50m歩いた先に88歳のババアがやっているタバコ屋がある。
そのババアは、生まれてから88年熊伍郎町を一歩も出た事がないというのだ。

日本、もしくは県、百歩譲って市ならともかく、
この面積30.18平方kmほどしかないこの町を
一歩も出た事がないなんて、それはなんとも信じがたい奇怪な話である。

そんな話を二十歳をむかえたばかりの正春は、
同じく二十歳の友人「作治」から電話越しで聞かされていた。

いつもなら毎日のように会っていた作治だが半年前にその熊伍郎町に引っ越してからというものまるで付き合いが悪い。

数年前から俺たちのたまり場であった、
とあるBAR 「レディオセックス」に集合〜!

というかけ声にも、まるで来る気がないらしい。

熊伍郎町に引っ越してから一度も彼と会っていない。
タバコ屋のババアと同じで熊伍郎町に引きこもったか?

正春はよからぬ不安を抱かずにはいられなかった。

そんなある日作治の方から熊伍郎町の家に招待された。

正春にとって熊伍郎町はなんとも奇怪な町のイメージをもっていたが、
実際訪れてみると、どこにでもある地方の住宅街だった。

作治も元気そうで以前とまるでかわっていなかったので、
正春は少し安心した。

しかし熊伍郎町、全くと言っていいほどプレイスポットがない。
居酒屋がなければ、カラオケもボーリングもなんにもない。

熊伍郎町の隣の「前達町」には徒歩で行ける程の距離で、
正春は以前訪れた事もあり、
プレイスポットがあることを知っていた。

作治に前達町に行こうぜ。

と言ったが作治は「行きたくない!」と激しくそれを拒んだ。

そして正春と作治はその事で口論になり、後味悪く別れた。

正春は作治が前達町に行きたくないというよりは、
熊伍郎町から出たくないように思えていた。

それは正春にとってなんとも奇怪な事に思えてきた。

作治と別れて3日後のことだった。

テレビのニュースで熊伍郎町の中心部にある山、熊伍郎山が火事になった事を伝える
ニュースだった。

その山火事は民家に燃え移り小さな町全体を焼き尽くしてしまったと伝えた。

ちゃんと作治は逃げられたのだろうか。

心配になって被害者の情報を見ていたが、
なんとその山火事の被害者は熊伍郎町の住民登録をしている人間、全員だった。

ニュースはその山火事の事件は奇怪だと伝えた。

火事の時間は夕方5時だったが、その時間帯に町の外にいた人間は
一人もいなかったことになる。

町の外に、仕事に行っていた人間は?
町の外に、遊びに行っていた人間は?

偶然にもすべての住人が、町にいたとしても、
火事になってから逃げる時間は十分にあった。

大きな火事ではあったが、火の燃え移るスピードはそこまで早くなかった。

しかも住民のほとんどの死体は町の境にあり、
そのどれもが、一歩も隣の町には入っていない。

どうしてそうまでして、熊伍郎町の住民達はこの町を出たくなかったのだろう。

… 終わり。ギャ〜!!!!

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